沖縄のノロとユタの違いとは?
沖縄の文化に触れると、必ず耳にするのが「ノロ」と「ユタ」の存在です。
どちらも沖縄独特の信仰にかかわる存在だということは分かりますが、違いがあるのか、あっても何が違うのかよく分からないという人も多いのではないでしょうか。
そこでこの記事では、沖縄のノロとユタの違いについてくわしく解説します。
その違いを知っておくと、沖縄の文化をよりくわしく理解することができます。
ぜひ参考にして下さい。
沖縄のノロは祭祀の統括者
まずノロについてですが、現代の役職に喩えるなら「国家公務員」といえます。
ノロは家柄や血縁によって琉球王府より任命され沖縄各地で祭祀を執り行う存在だからです。
地方によっては、統治者のような政治的役割も果たすことがありました。
どのノロがどの地方に配置されるのかは琉球王府に決定権があり、ノロは辞令書をもって各地方に赴任しました。
祭祀に必要な道具や装飾品、「殿内」と呼ばれる屋敷なども支給されます。
さらに国家公務員ですので、当然のことながらお給料が発生します。
当時のお給料は、現代の価値に換算すると月6~10万円ほどでした。
ノロの頂点にたつ役職である「聞声大君」は首里での祭祀を司り、時には琉球国王と共に国内の巡礼にでかけることもあるなど王に並び立つ権利をもっていました。
多くの場合、王の姉妹や親族が任命されています。
広域を統括するノロや北山地区など重要な地方に派遣されるノロの多くも王族やその分家の出身者が主でした。
ノロはアマミキヨなど神々や祖先の声を聞き祈りを捧げるのが役目です。
沖縄のユタは拝み屋
次にユタですが、現代の役職に喩えるのであれば「拝み屋」「占い師」「カウンセラー」など様々な職種が当てはまります。
ユタは血縁ではなく個人の才能(霊感)がある場合に修行を経て名乗るようになる民間の職業です。
そのため人々は相談や祈願をユタに持ちかける際にお礼を渡し、それがユタの生活の糧となります。
個人の才能に左右されるため優れたユタがいる一方で、法外な礼金を要求したり誤った知識を授ける自称ユタも存在したため、琉球王国下でユタは弾圧される存在でした。
しかし先祖の霊の祀り方や家庭の様々な悩み、結婚、妊娠、健康など多岐にわたる悩み事を解決してくれるユタの存在は人々の生活と切っても切れないものであり、人々はこっそりとユタに相談を持ちかけその文化が廃れることはありませんでした。
主にユタを頼るのは女性とされています。
男性は公の場では「ユタは迷信」といいつつも、家の中の相談は妻を通して密かにユタに尋ねるということが当たり前に行われていたようです。
ノロは神と交信しますが、ユタは精霊と交信するといわれています。
時には日本本土で見られる「イタコ」のように、死者の霊を自身に宿し先祖の言葉を子孫に伝えるという能力を持つユタもいました。
ユタの能力は個人差が大きく、また生涯を通じて修行するためその力も変化していくといいます。
現代に生きるノロとユタの違い
ノロとユタ、それぞれの特色についてご紹介して参りました。
ここで気になるのは、「歴史的な経緯は分かったけれど、現在もノロやユタは存在しているの?」という疑問ですよね。
琉球王国という制度の下で身分の保障があったノロですが、琉球王国がなくなってしまった後はどうなったのでしょうか。
ユタも同様に現代での扱いが気になりますよね。
まずノロですが、お給料の手当や政治的な地位こそなくなったものの、一部の役職では現在まで血縁者に祭祀を執り行う役割が引き継がれています。
たまに御嶽で祭祀を執り行っている人々を目にしますが、現代に継承されたノロである場合があります。
ノロは琉球王国が失われた現代においても、人々の尊敬を集める職です。
一方ユタですが、琉球王国時代と同様に明治政府下でも弾圧されました。
現代では公的には禁止されていません。
ただし弾圧された時代が長かったことと、ユタには個人的な悩みを打ち明けるためか表だってユタについて語られることはほとんどありません。
時には「ユタの家系」であることを売り文句にしている占い師もいますが、ほとんどのユタは表だって活動することはありません。
地元の人間以外が会うことは難しい存在です。
まとめ
沖縄のノロとユタの違いについてご紹介しました。
ノロは琉球王国の支配体制下で働く人々です。
ユタは民間の悩み事解決を請け負う人々です。
どちらも女性が担う職業で、異なる面から沖縄の祈りの歴史を支えてきた存在です。
仕事内容に違いはあっても、どちらも人々の尊敬を受ける職業です。
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